伊根湾に沿って230軒もの舟屋が立ち並ぶ京都府北部の与謝郡伊根町。平成17年に国の「伝統的建造物群保存地区」に選定された“伊根浦”の中心地にある伊根町観光案内所から歩いて数分、幕末の安政4(1857)年に建てられた旧向井家が、この度リノベーションし食事処へと生まれ変わりました。聞くところによると伊根で捕れた新鮮な魚が食べられるそうですよ。さっそく、訪ねてみました。
・基本的な感染予防対策(マスクの着用・手洗い・身体的距離の確保など)を徹底してください。
・屋外の活動も慎重にしてください。
・発熱等の症状(発熱、咳、のどの痛み、息苦しさなどの症状)がある場合は、外出を控えてください。
激動の幕末に立てられた築160年の古民家
この住居が建てられた安政4年頃といえば、4年前に黒船が浦賀に来航し、前年の安政3年に篤姫(あつひめ)と第13代将軍・徳川家定(いえさだ)が結婚。そして伊藤博文や桂小五郎、高杉晋作、吉田松陰らが活躍した時代。そのような激動の幕末に建った建物だと思うと、なんだか不思議な気分になってきます。
伊根町の家は全てが舟屋ではなく、海側に舟屋、道を挟んで山側に主屋となっている場合が多く、「食事処 うらなぎ丸」も山側にあり主屋として使われていました。建物について教育委員会の方にお話を伺ったところ、旧向井家は伊根町の中でもかなり裕福な家のよう。
表には立派な塀とを構え、屋根の上には、かまどの煙を出すための大きな煙出し(けむりだし、けむだし)があります。また、右側の小窓がある部屋は、おそらく女中部屋だったのではないかとのこと。女中さんが住むほど豊かな家だったんですね。
そんな旧向井家の持ち主が、「まちの観光振興に活かしてほしい」と建物を伊根町に寄贈。まちでは、以前から泊食分離(※)を推進していることから、舟屋を活かした素泊まりの宿はあるものの、夕食を提供できる飲食店が少なかったため飲食店として活用にすることに決定。伝統的建造物としての保存と活用の両方をできるようになりました。
※宿泊者が宿泊施設に泊まる際、宿泊施設で食事せず、近隣の飲食店を利用すること
そして公募により、地元の水産会社 伊根浦漁業株式会社が「みんなに伊根の魚を食べてもらいたい。伊根の魚を使った飲食店ができることで伊根町がもっともっと元気になってもらいたい。地元の人も利用できる食事処にしたい」と自社の定置網で水揚げした魚介を使った料理を出す食堂をオープンさせることに決まったのです。
伊根の漁師さんによる店ならでは! 朝、届いた魚をいただく
オープンの日は2022年4月21日。KYOTO SIDE編集部はオープン前日に取材させていただきました。玄関の暖簾には伊根浦漁業の前身である「伊根漁業協同組合」の時代のマークが書かれています。ちなみに「うらなぎ丸」という店名は、伊根浦漁業所有の定置網船の名前なんですって。
さっそく中へ。天井が高くて開放的~! テーブル席、小上がり席は丹後型の「広間型三間取り」の構造を残しているそうですよ。床はバリアフリーですし、これなら車いすの方もベビーカーの方も安心ですね。
それに玄関の外に手を洗うところもありますし(写真右下)、木を多用しているので温かみがあっていいなあ。随所に使われているタイルやサインにセンスが感じられます。
奥の庭が見える明るいテーブル席もステキだなあ。
いろいろな魚が味わえる「お造り定食」と「にぎり定食」
さて、気になるお料理ですが、毎朝、定置網にかかった新鮮な魚が店に届けられ、それを見てから内容が決められます。魚はもちろん時期によって変わりますが、ブリ、サワラ、タイ、イワシ、マグロ、イカ、アジ、カタクチイワシなどなど魚種が豊富なのも魅力。
メインメニューがこの「お造り定食」。豪華~!!! 数種類の刺身が盛り付けられ、ボリューム満点。見ているだけでヨダレが……。
それからお寿司が15貫ものった「にぎり寿司定食」も目玉です。これだけ新鮮な魚介が贅沢に味わえて、両方とも2178円なんてビックリ。
その他、エビや魚を揚げた「ミックスフライ定食」や「煮魚定食」もありますよ。ちなみにグループの中で魚介が苦手な人がいた場合、鶏の「から揚げ定食」などもあるので安心です。
金~日曜日は17~20時の営業もあるそう。伊根のお酒もあるそうなので、夜は伊根の魚と地酒を楽しむのもいいですね。伊根の美しい景色と美味しい魚を食べにでかけませんか。
■■INFORMATION■■
食事処 うらなぎ丸
京都府与謝郡伊根町字平田105
TEL 0772-32-9000
営業時間 11:00~14:00(L.O.13:30)、金~日曜17:00~20:00(L.O.19:30)
定休日 火・水曜日
車は場合は伊根浦公園駐車場(有料)・七面山駐車場(有料)へ