【Vol.42-巻頭特集】SMILE〜すべては週末の笑顔のために。(前編)

2016シーズン始動直後から、ピッチ外での笑顔も印象的なふたりがいる。
これまで大切にしてきたのは、仲間から学ぶ姿勢と、ピッチ内外でのコミュニケーション。
円熟期に差しかかった彼らが今、チームが一丸となって目標を達成するための鍵について語る。

ピッチ外でのコミュニケーションは試合の中でも必ず生きてくる

佐藤:京都に来てもうすぐ3カ月。京都の街のことはまだまだわからないけど、住まいが決まって落ち着いたし、生活のリズムもできた。初めての関西のクラブだったから、どうなるかなと思ってたけど、生活もサッカーも充実していて毎日が楽しい。ジェフ(ジェフユナイテッド千葉)時代のチームメイトはおとなしいというか、各自が独立してあまり他の人に干渉しない感じだった。関西のチームだからというわけではないかもしれないけど、サンガはみんな仲がいい。

石櫃:オレたちもよく絡んでるからな。

佐藤:それはビツさん(石櫃)ならではの気遣いだと思う。今シーズンから新たに加入した選手が溶け込みやすい空気をつくってくれている。

石櫃:オレのこと、良く言いすぎてもあかんで(笑)。チームの顔ぶれが変わったから「こうせなアカン」って思うわけではなく、こういう性格やから。もちろん、やるべき時は真剣にやるけど、新しい選手が来たらその人のことを早く知りたいし、逆に自分のこともわかってほしい。年齢の上下に関係なく話しやすい雰囲気をつくることは日頃から自然にやってる。

佐藤:ピッチに入れば本気モードにスイッチが入るし、ピッチで互いに言いたいことを言い合うことが大切。片方が言いっ放しになるのは良くないからね。そのためにもピッチ外にいる時から積極的にコミュニケーションをはかれる雰囲気をつくることは大切だと思う。

石櫃:今年は経験のある選手がたくさん入ってきたし、去年もサンガでプレーした選手とうまく合ってきたら絶対に強いチームになる。いい雰囲気をつくることを毎日意識すれば、結果として出てくると思うねん。試合の中でも誰かがボールを奪われたらみんなで取り返してミスを帳消しにするのが本当のチーム。それは普段からのコミュニケーションがうまくいかなければ絶対にできないことだし、それができてるサンガはこれからもっと良くなる。

佐藤:これまでの3試合(取材日3月17日)はどの試合も先制していて、ゼロで抑えることができれば勝てていた。もちろん追加点を挙げることができていたら楽だったし、理想的な展開と言えたかもしれないけど。引き分けは「勝点2を落とした」、「勝点1を拾った」という考え方のどちらもできるけど、長いリーグ戦の中では起こり得ること。第3節・ファジアーノ岡山戦では一度逆転されたけど、ビツさんのゴールで追いついて相手に勝点3を与えなかった。あの試合はデカかったと思うし、チームとしてはまだまだ成長できると感じた試合でもあった。

石櫃:J1に昇格するためには、これまでのような試合を勝ちきる力は絶対必要。内容を見ても相手にやられていたわけじゃないし。サンガはもっと上を目指せるチームなので、「次は絶対に勝つ」と気持ちを切り替えてやるだけ。

仲間の長所を吸収してきたから今までサッカーを続けてこられた

佐藤:ビツさんはまずクロスボールがうまい。そして、それ以前にボールを「止める」、「蹴る」という基本技術が高い。

石櫃:おまえもな(笑)。

佐藤:そうでないとプロとして長く続けられないでしょ。それに加えてビツさんには90分上下動できる運動量もある。チームでデータを取った時の計測値は普通だけど…。数値で出ないのがビツさんの不思議(笑)。あと、ポジショニングの良さも。頭を使うからちゃんとしたサッカーになるというのがあるし。その頭の回転の速さはサッカー以外にも生かされてて、ビツさんといると会話が弾む。おかげでチームの誰もが壁をつくらずにコミュニケーションを取れている。

石櫃:最初、ケンタロウ(佐藤)はテクニック系の選手かなと思ってたけど、初めての実戦形式の練習の時、強さを出して激しいプレーをしてきたのでビックリした。試合でもチームのために戦っているのがしっかり伝わってくるし、周囲の要求にもしっかり応えてくれる。一緒にプレーしてて本当に頼れる存在だと思う。話は面白くないけど(笑)。

佐藤:顔が赤くなりそうです(照笑)。

石櫃:もうひとつ褒めておくと、ケンタロウは自分をしっかり持っていて、週末の試合に臨むまでのスタイルがちゃんと確立されている。遠い先のことに気を取られるんじゃなくて、目の前の一試合に向けてしっかり準備している。これはプロとして続けるにあたってすごく大事なこと。

佐藤:一試合一試合、一日一日の積み重ねは絶対に必要。そうでないとプロの世界に身を置けないという責任感を個人として持ってやってるつもりです。そういう人間が多いほど強いチームになると思う。この状況でサッカーができていることに感謝するとともに、「結果は変えられないが、過程は変えられる」という信念を持ってやっています。

石櫃:その名言、いただきましたっ!

佐藤:ビツさんだって今までの積み重ねがあったから今があるでしょ?ただ年数を重ねてるだけじゃない。年上の山瀬(功治)さんを見ていててもそう思う。ただ上の人に引っ張ってもらうだけじゃなく、追いつけ追い越せで頑張っていきたい。

石櫃:ケンタロウの姿勢は回りへの影響が大きいと思うわ。ケンタロウの練習への取り組み方は見て学ぶものがある。オレたちが若かった時は、先輩から言われたことは絶対に守るということがあったやん?先輩の言葉は絶対という感じで。

佐藤:貴重な助言だったから。

石櫃:今の若い選手の間では言われたら「まずやってみよう」という姿勢が少し薄れている気がするねん。

佐藤:言われたことをずっとやり続ける必要はないと思うけど、やってみないと自分に合うか合わないかもわからない。自分がプロになった時は先輩のいいところを吸収しようと思って見よう見まねでやってた。今も年齢の上下に関係なく、いいところは吸収したいと思ってる。

石櫃:オレもその姿勢がなかったら今こうしてサッカーをやってないと思う。プロは「自分でやって当たり前」の世界だし、先輩がいちいち助けてくれるわけじゃない。先輩の取り組み方を見て学び、どうしてもわからないなら聞きに行っていた。

佐藤:自分も同じです。その上で自分のストロングポイントを磨くことは本当に大事だと思う。

【取材協力】
restaurant&garden chou-cho
京都府宇治市広野町八軒屋谷26
宇治市植物公園駐車場内
TEL:0774-44-8845
open 11:00-22:00 close mon

プロフィール:石櫃 洋祐

石櫃 洋祐 ISHIBITSU Yosuke

1983年7月23日生まれ。大阪府出身。大阪学院大学卒業後、ヴィッセル神戸、名古屋グランパスでプレーし、2008年には日本代表に選出された。2014年にサンガに加入。サイドバックとして精力的に上下動し、精度の高いクロスボールを供給することから「クロスボール職人」の異名を持つ。また、攻撃参加時やフリーキックでは右足の強烈なキックで自らゴールを狙うこともできる。

プロフィール:佐藤 健太郎

佐藤 健太郎 SATO Kentaro

1984年8月14日生まれ。三重県出身。順天堂大学卒業後、モンテディオ山形、ジェフユナイテッド千葉でプレー。ボランチが主戦場だが、左サイドもこなすことができる。サンガに加入した今シーズンは、開幕戦からスタメン出場し、的確なポジショニングや対人の強さで攻守の舵を取るとともに、精度の高い左足のキックでチャンスを生み出している。

この記事をおすすめする人

【Vol.42-巻頭特集】SMILE〜すべては週末の笑顔のために。(前編) 写真

KYOTO eBOOKS編集部

京都府内の観光・情報誌や広報誌などを電子書籍にして、厳選された記事を読みやすくお届けします。

おすすめ

サンガタイムズ 2016年4月号

アイコン:ブックを見るブックを見る

ピックアップ見る