プロになれただけで満足していないか? 試合に出ただけで安心していないか?
今シーズンのサンガにスタメンを確約されている選手など、誰ひとりとしていない。
もっと貪欲に、もっと全力で。國領と山田がサンガアカデミー出身選手のあり方について考える。
公式戦を経験することによってメンタルとプレーが大きく変わった
國領:サンガU-18からトップチームに昇格した1年目こそサンガに所属していたものの出番がなくて、2シーズンをSP京都FC(2014年まで佐川印刷京都SC)、去年はMIOびわこ滋賀と、合計3年間JFLでプレーしてきた。今年サンガに戻って、やっとサンガの選手としてリーグ戦にも出ることができた。
山田:みんなで一平くん(國領)のサンガデビューをお祝いしましたもんね。
國領:初めての試合は自分が出た後に追いつかれたので悔しかったけど、試合に出られたことは純粋に嬉しかった。これまでずっと「サンガで出ないと意味がない」と思ってたから。
山田:やっぱり公式戦に出られると変わりますよね。僕も去年、試合に出たことでメンタルが大きく変わった。15試合出た後にサブになって、さらにはメンバー外になって、落ちるところまで落ちたような感じになったけど、それも含めていい経験になったと思います。今だから言えるけど、試合に出ていた時は不安しかなかった。「ミスしたらあかん」とばかり考えていたし、勝てなかったら責任を感じて落ち込むし、自分の中のネガティブな部分しか出てなかったと思う。僕はその後一度メンバーから外れたことで、試合に出ていた時の自分を冷静に見つめ直すことができた。そのおかげで自分でもはっきりわかるぐらいメンタルが強くなったと思う。今年はまだ試合に絡めていないけど、自信を持ってプレーできてる。
國領:不思議なもので、一度公式戦を経験するだけでプレー中に落ち着きが生まれる。そのせいか視野が広くなったように感じるし、今まで通らなかったようなパスも通るようになる。最近はフリーキックも決まるようになってきたし。
山田:そう! 一平くんは点を取るタイプの選手じゃなかったのに、今は練習試合でたくさんゴールを決めるようになったよね。
國領:サンガを離れてた3年間はサンガやJ2のレベルを頭の中で想像するしかなかった。それを今は肌で感じられるようになったのが大きい。それともうひとつ、今シーズンの初めはボランチだけをやってたけど、途中からサイドに入るようになったやん? マルさん(石丸清隆監督)から「サイドに入った時は推進力を生かしてほしい」と言われたので、それを意識するようになってから点を取れるようになった。これからはボランチに入っても前を意識できるようになると思う。点を取れるボランチは相手にとったらイヤだろうし、「恐い選手」になれる気がする。今までいろんなポジションをやってきた分、いろんなことを指導者に言われてきた。これからその経験をもっと生かしていきたい。
山田:一平くんのプレーは「器用」の一言に尽きる。ボールタッチが柔らかくて、多少乱れたボールでもしっかり収めてくれる。僕もたまに鬼パスを出してしまって「うわ、高すぎた!ゴメン!」って内心思うことがあるけど、一平くんならちゃんと足元に収めてくれる。シュートの時もギリギリのタイミングで足首の角度をちょこっと変えて裏をかいてくる。ゴールキーパー目線で見たら本当にイヤな選手。今日もシュート練習でやられたし(笑)。
國領:シュート練習の時、よく目が合うよな。ゲンキ(山田)がシュートを止めた時は「どや!」みたいな感じでこっちを見てくる。逆にシュートを決められたら悔しいのかなかなかこっちを見ない。それでも10秒ぐらいしたらチラッとこっちを見てくるので、その瞬間を待って目を合わせるのが楽しい(笑)。
山田:あと、だいぶ走れるようになったよね。
國領:ほんまに?
山田:特にダッシュしてる時そう思う。
國領:でも、実際足が速くなったわけじゃないよ。コンマ何秒かもしれないけど、出だしや切り替えを早くしてるだけ。JFLには足の速い選手や強い選手が多かったから、その中で自分の技術を生かすにはどうしたらいいか考えてそうするようになった。ゲンキはU-18の頃から見てるけど、昔からシュートストップはいいものを持ってるし、プレーの思い切りも良かった。判断に迷っているのを見た記憶がない。今はそれに加えてつなぎの部分が良くなってる。長いボールを蹴るにしても、近くの選手につなぐにしても、相手がプレッシャーをかけてきていようと慌てず対処できている。そこにもっと自信をつければさらに良くなると思う。ポジション争いの壁は厚いけど、いつ試合に出てもおかしくないぐらいの力はあるよ。
山田:ありがとうございます!
プロフィール:國領 一平
國領 一平 KOKURYO Ippei
スカラーアスリートプロジェクト4期生
1993年7月31日生まれ。滋賀県出身。サンガU-15、U-18を経て、2012年にトップチームに昇格する。2013〜2014年は佐川印刷SC(SP京都FC)、2015年はMIOびわこ滋賀でプレーし、今年からサンガに復帰した。ボランチやサイドハーフ、サイドバックなど、さまざまなポジションをこなすことができるユーティリティプレーヤーであるとともに、左足から放つ高精度のキックが武器。
プロフィール:山田 元気
山田 元気 YAMADA Genki
スカラーアスリートプロジェクト5期生
1994年12月16日生まれ。岐阜県出身。中学校卒業後サンガU-18に加入し、2013年にトップチームへ昇格。昨シーズンはリーグ戦15試合に出場し、貴重な経験を積んだ。抜群の反射神経を生かしたシュートストップや、思い切りの良い飛び出しに定評がある。去年はU-22日本代表の国内合宿にも招集されるなど、将来性に期待が寄せられている。
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